サーモちゃん
学生の頃のお話。
当時私は、ちょっとワケありで特別な講義を受けていた。
週に1回のそのクラスはほとんどが男子学生。慣れるまではイヤだった。
ある日そのクラスで講義を受けていると、どこからかメモ紙がまわってきた。
それには「寒いのでクーラーを止めてください」と書かれていた。
エアコンのスイッチが正面の壁にあり、私が一番近い所に座っていたのだ。
席を立って、スイッチをOFFにし、そして席に戻った。
しばらくすると、またメモ紙がまわってきた。
今度は「暑いのでクーラーを入れてください」と書かれていた。
また席を立ち、スイッチをONにして、席に戻った。
ON-OFFしかないんだもんなー。
次の週またそのクラスに行くと、何人かが私のことを「サーモちゃん」と呼んでいることに気づいた。
直接話しかけるでもなく、遠くでからかうように呼ぶのである。
ハラが立った。ただでさえ男ばっかりで、なかなかうち解けなくてイヤなのに。
そのうち、廊下などで「あ、サーモちゃんだ」とか言われるようになった。
からかわれていると思っていたので、テッテー的に無視していた。
その後みんなとはいつの間にかうち解けてしまった。
からかわれていたのか、うち解けるきっかけを作ってくれていたのか、それは定かではないが、今となっては懐かしい想い出である。
…のハズなのだが。
夕べ夢を見た。
教室で講義を受けている夢だ。
となりに座った男が私を「サーモちゃん」と呼ぶ。
それが頭に来て無視し続けるという夢だ。
実は根に持っているのかもしれない…。